日高翡翠 (Hidakahisui)
北海道で発見され、新種の翡翠として一躍脚光を浴びた日高翡翠。
春の野を思わせるやわらかな蓬色のなかに、萌え出ずる草木のような躍動的な模様がみられます。
日高翡翠ってどんな石?
幻となった第三の翡翠
日高翡翠は北海道日高町産の緑色の宝石です。
クロムダイオプサイト(クロム透輝石)の一種ですが、翡翠と似た構造を?もち、緑色の美しさやツヤ・透明感などが翡翠同様に優れていることから“第三の翡翠”とよばれています。
翡翠はヒスイ輝石からなる硬玉(ジェダイト)と角閃石からなる軟玉(ネフライト)の2種類に分けられますが、日高翡翠はそのどちらでもない翡翠の新種というわけです。
日高翡翠のベースの緑色はクロムによる発色ですが、ウヴァロバイト(濃緑)・クロムスピネル(黒)・ペクトライト(白)などの鉱物も含まれており、渦巻くようなマーブル模様、絵の具を細かく散らしたような点模様などがみられます。
こうした独特の模様も日高翡翠の魅力のひとつといえるでしょう。
日高翡翠の存在が知られるようになったのは昭和後期のことでしたが、宝飾品に使用するためにさかんに採掘され、わずか数年でほとんど採り尽くされてしまいました。
そのため現在では“幻の翡翠”として希少価値が高まっています。
日高翡翠に伝わる意味
叡智と癒しを与える
日高翡翠は翡翠と同質の特徴をもつ宝石ですが、鉱物としてはクロムダイオプサイトです。
クロムダイオプサイトは、持ち主の知性や思考力を高めるとされる“叡智の石”です。
ヒーリングストーンとしても知られており、不安や苛立ちをしずめ、心身を穏やかで安定した状態に保つといわれています。
また翡翠などの緑色の石は古代から長寿・繁栄の象徴とされてきました。
日高翡翠にもこうしたパワーが宿っているとされていますので、健康のお守り・開運のお守りとしてもおすすめです。
日高翡翠の歴史・言い伝え
再発見された古代のジュエリー
日高翡翠を使った製品は、実は北海道各地の縄文時代の遺跡からも発見されています。
十勝郡浦幌町の平和遺跡では、縄文時代早期(約7000年前)の日高翡翠製の垂飾(ペンダントトップ)が出土しました。
古代の人々にとって、緑色は豊穣や生命の存続・魂の再生をもたらす神聖な色でした。 そのため緑色の宝石である日高翡翠も不思議な呪力をもつ石として珍重されていたのかもしれません。
しかし日高翡翠はいつの間にか歴史のなかに埋もれた存在となり、昭和になってから“発見”されるまで長らく忘れ去られていました(不思議なことに新潟県の糸魚川翡翠も同様の歴史をたどっています)。
日高翡翠の発見のきっかけは、1964(昭和39)年に函館市の資産家・久保内貫一氏が日高町の村上晃氏に翡翠探索を依頼したことでした。
日高山脈には緑の石が多かったことから、久保氏はここに翡翠もあるはずだという確信をもっていたのです。
するとその2年後、千露呂川支流のペンケユクトラシナイ沢で翡翠のような石が見つかりました。
この石は、アメリカ地質調査所のコールマン博士と北海道大学の八木健三博士によって“翡翠(軟玉)”と認定されたことで一躍注目を集めることになります。
ところがその後の研究により、日高翡翠が実はクロムダイオプサイト(緑色透輝石)であることが判明しました。
しかし、その強靭な構造や透明感・ツヤ・色の美しさは通常の翡翠と比べても遜色なく、1980(昭和55)年に宝石学会誌に発表された番場猛夫博士の論文によって、日高翡翠(クロム透輝石ヒスイ)は翡翠と同様の美しさをもつ宝石として国際的にも公認されるようになりました。
こんなプレゼントにおすすめ
仕事のお守りに
日高翡翠は持ち主の知性や思考力を高め、叡智を授けるとされています。
物事の本質を深く理解できるようになることで、仕事においても自分のすべきことが自ずとわかってくるでしよう。
さらなる飛躍を目指す方におすすめの石です。
健康・長寿を願って
心と身体のバランスを整えるとされる日高翡翠は、健康状態の維持によいとされるパワーストーンです。
特に精神的なストレスからくる体の不調を予防してくれるでしょう。
翡翠と同じく“長寿"を意味する石ですので、敬老の日の贈り物などにもぴったりです。
日高翡翠のカラー・種類
日高翡翠はクロムダイオプサイトです。
ダイオプサイトには白色、黒色、褐色などさまざまなカラーのものがありますが、クロムによる緑色の発色がみられるものをクロムダイオプサイトとよびます。
日高翡翠にはマーブル模様、点模様などがみられますが、このうち濃緑色部分はウヴァロバイト、黒色部分はクロムスピネル、白色部分はペクトライトなどの鉱物によるものです。
通常の翡翠にはさまざまなカラーバリエーションがありますが、日高翡翠は緑色のみです。
日高翡翠の産地
北海道日高町
取り扱い・お手入れについて
日高翡翠は硬質な石ですので比較的扱いやすいです。汚れが目立ってきた際には水洗いなども良いですが、しっかりと水分を拭き取って自然乾燥してあげましょう。
モース硬度:6.0~7.0
へき開:不完全